涅槃図(巨福寺本)
1幅 ※
絹本着色 199.8×143.1
元禄16年(1703)頃
寺町・巨福寺蔵
表具の裏に「野田源五左衛門勝就」という絵師の名前と元禄16年(1703)の年紀が入った書付が貼り込まれています。2幅の幅広い絹を中央で継いで画面を制作しており、絹継の断裂と折れによる亀裂、画面下部の染みの付着などから、涅槃会の際に掲げられて使用されたであろうことが想像されます。
表現の特徴としては、菩薩たちを黒髪で描いている点が注目されます。通常菩薩形は、髪の色を釈迦と同じく青で表すことが多く、黒髪で表す作例は、地方の狩野派絵師の作例と考えられる定林寺本や、寿覚院本に見られるため、巨福寺本の絵師についても仏画を専門に描いている絵師ではないと考えられます。墨線のおおらかな線描が目を引き、特に沙羅樹や土坡などについては墨の濃淡を使い写実的に表現されており、個性的な作品と言えます。