涅槃図(観泉寺本)
1幅 ※
絹本着色
142.5×147.2
宝永5年(1708)頃
落合町・観泉寺蔵
箱書きに宝永5年(1708)の年紀があり、制作年代もこの頃と考えられます。本紙の大きさが縦142.5cm、横147.2cmのほぼ正方形の画面に描かれていますが、江戸時代の涅槃図の作例の多くは縦長のものです。しかし高野山金剛峯寺所蔵の仏涅槃図(1086年制作)をはじめ古い作例には画面が正方形に近いものが多く、観泉寺本はそのような古様な涅槃図の流れを汲んでいると考えられます。
表現的な部分では土坡や雲、波などの線描や彩色が松連寺本と近く、江戸時代の表現様式が強く反映されているということができます。松連寺本とは会衆の配置や服制等にも共通性が感じられるため、同じ工房で制作した可能性も考えることが出来ます。沙羅樹について、幹や葉の形は松連寺本と同じような表現となっていますが、画面の縦幅に合わせて木の丈は短くなり、会衆の配置も変えているため、会衆と幹の前後関係には不自然な点も見られ、絵師の苦心の跡が伺えます。古様な構図と時代の表現様式が共存している興味深い作品といえます。