涅槃図(松連寺本)
1幅 ※
絹本着色
176.2×110.5
寛政5年(1793)頃
上谷町・松連寺蔵
表具の裏に寛政5年(1793)の年紀があり、文久4年(1864)に再興と記されています。右側の縦等間隔に丸く欠損部があり、これが文久4年(1864)の修復と考えられます。欠損部とその他の部分の顔料や筆致に大きな差が認められない為、修復の際に全体に補筆や補彩を施していると考えられます。
会衆の横には尊名を書き入れるための短冊形がありますが、右手前の黒衣の僧と、地に伏す橙色の衣の在家信者のみに短冊形がありません。この二人の側には絹の欠損部があるため、当初はその欠損部に短冊形があったが、修復の際には分からず復元されなかったものと考えられます。このことは逆に、尊名の短冊形が当初からあったことを示すものですが、現在文字が見える部分はなく、少なくとも文久4年(1864)の修復の際には書かれておらず尊名は分からなかったものといえます。個々の尊名はわからなくても、この群像表現を涅槃図として理解し信仰するという、当時の信仰の有り様がうかがえます。