涅槃図(大福寺本)
1幅 ※
紙本着色
149.0×106.7
18世紀後期
落合町・大福寺蔵
中央に横たわる釈迦は画面に対して大きく描かれ、取り囲む会衆も顔が大きく描かれており、それぞれいきいきとした表情をしています。松連寺本などと比較すると、顔に対して体の見えている部分が少なく、密集しているといえます。
一方で一人ずつの視線や体勢を見ると、涅槃の場面に衆参するという本来の画題からすると、会衆は皆釈迦を向いている方が自然ですが、大福寺本ではちぐはぐな方向を向いている者も見られます。特に画面下中央部の迦陵頻伽は釈迦とは反対の方向に花を捧げ持っており、動物達は釈迦の方を向くものはあまり見られません。これらのことは大福寺本が同じような構図の祖本をそのまま転写したものではなく、様々な作例や絵手本からピックアップして画面内にはめ込んだために生まれたものと考えられます。画面中程の両端に見える河岸の左右を隠すように描かれた雲も空いたスペースの不自然さを解消するための要素と考えられます。
表具裏に弘化3年(1846)に表具の修理を行ったことが分かる書付があり、本紙の制作年代については、雲や波の表現、会衆の衣の文様等が松連寺本と近いため、18世紀とみてよいでしょう。