涅槃図(寿覚院本)
1幅 ※
紙本着色
216.8×174.5
安政4年(1857)頃
寺町・寿覚院蔵
寿覚院本の表具の裏には、宝暦8年(1758)に制作した涅槃図が大破したため、安政4年(1857)に修造したという内容の書付があります。現在の画面に大がかりな修復の形跡はないため、実際は安政4年(1857)に転写して新しく制作したものと考えられます。
定林寺本と比較すると、会衆の配置から細かい着衣の柄まで完全に一致しているため、同じ祖本を転写したものと考えられ、表現は定林寺本と同じく狩野派の要素を感じることができますが、釈迦の後ろに描かれる天部・仏弟子や摩耶夫人の一団、動物などの表現は、他の部分に比べて図像的にも整合性がなく筆致も明らかに辿々しいものとなっています。この辿々しさは、祖本が欠損しており、写すことが出来なかった部分を他の作例や絵手本を参考に絵師が補って描いたためと考えられます。寿覚院本が転写した時、祖本はかなり損傷していたということができますが、それでも宝暦8年(1758)に制作された涅槃図の伝統を汲んで再興したいという意図が感じられます。